今回は向後千春さんの書籍『世界一わかりやすい教える技術』より、
「5000時間練習すれば誰でも上手にできるようになる」という考え方をご紹介します。
部下や後輩の育成に悩んでいる方、
そして自分自身の成長に行き詰まりを感じている方に、
明日からの仕事に活かしていただけたら嬉しいです。

5000時間の法則とは

「5000時間」と聞くと、
途方もない数字に感じるかもしれません。
しかし、仕事に置き換えると意外と身近な数字です。

1日8時間、年間およそ210日働くとすると、
1年間で約1,700時間。
3年でちょうど約5,000時間になります。

「石の上にも三年」という言葉がありますが、
同じ仕事に3年真剣に向き合えば、
誰でも「上手」と呼べる水準に届くということです。

では、「一流」になるにはどうでしょうか。
心理学者アンダース・エリクソンの研究では、
トップレベルのバイオリニストは20歳までに平均1万時間以上の練習を積んでいたことが分かっています。

また、チェスや音楽、スポーツなど様々な分野の研究から、
一流の域に達するにはおよそ10年の集中的な準備期間が必要だとされています。
いわゆる「10年ルール」です。

仕事の時間のすべてが「練習」になるわけではありません。
日々の業務の中で、意識して改善に向き合える時間を1日3時間程度とすれば、
10年でおよそ1万時間。
これが「10年で一流に」の目安です。

ただし、エリクソンが強調しているのは、
ただ時間を費やすことではなく、
目的を持って正しく練習することの重要性です。
ここに、本書の考え方とつながるポイントがあります。

本書のポイントは、次の3つです。

  • ① 才能ではなく「行動の累積」で差が生まれる
  • ② 指導者は「環境と仕組み」を与える
  • ③ 「継続できない理由」を取り除く

① 才能ではなく「行動の累積」で差が生まれる

理由・背景

「自分にはセンスがない」
「あの人は特別だから」

教える側も学ぶ側も、
ついこうした言葉を口にしてしまいがちです。

しかし、スキルの差を生むのは才能ではありません。
「正しく行動した時間の総量」です。

ただし、闇雲に5000時間を過ごしても上達はしません。
自己流のまま時間を重ねるのではなく、
「望ましい行動」を正しく繰り返すことが前提になります。

実践のポイント

「できない理由」を才能やセンスに求めるのをやめること。
そのうえで、
「何を・どのように繰り返せば上達するのか」という正しいやり方を明確にし、
無駄な試行錯誤を減らすことが大切です。

② 指導者は「環境と仕組み」を与える

理由・背景

指導者の役割は、
「頑張れ」と背中を押すことではありません。
相手が5000時間の練習をやり遂げられるよう、
環境と仕組みを整えることです。

人が動けないのは、やる気がないからではなく、
「何をすればいいのか分からない」からであることがほとんどです。

実践のポイント

次の3つを意識します。

・具体的な行動に分解する
「しっかりやれ」などの抽象的な指示をやめ、
「いつ・どこで・何をするか」まで落とし込んだ、
小さなステップにして伝えます。

・行動を計測し、見える化する
何時間・何回できたかを数字で記録してもらいます。
積み上がった数字が達成感になり、
続ける原動力になります。

・直後に認める
望ましい行動をとったら、その直後に「認める・ほめる」。
これによって、その行動が繰り返されやすくなります。

③ 「継続できない理由」を取り除く

理由・背景

5000時間を達成できない最大の原因は、
「意志の弱さ」ではありません。
「仕組みがないこと」です。

続かないのは本人のせいではなく、
続けられない環境にある。
そう捉えることで、打てる手が見えてきます。

実践のポイント

最初から大きな目標を追わせず、
毎日続けられる最小限の行動から始めてもらいます。

あわせて、準備の手間や迷う時間など、
練習の妨げになるものを先回りして取り除いておきます。

おわりに

以上、
5000時間の法則をご紹介しました。

「時間をかけろ」という根性論ではなく、
「続けられる仕組みをつくる」という考え方。
人を育てる立場にある方にこそ、
大切にしていただきたい視点だと思います。

私自身を振り返っても、
うまくいかなかった時期はこう考えがちでした。

「自分には向いていない」

けれど本当に足りなかったのは、
才能ではなく、正しいやり方と積み重ねた時間だったように思います。

ぜひ明日からの仕事に活かしていただきたいですが、
理解と実践は異なるものです。
実践するための最初の一歩が必要であれば、
私が一緒に計画を練り、
伴走させていただきます。

絶対に今日は変えられる。
絶対に人生をより良いものにする。

そういった覚悟と情熱を持って、
今日に向き合っていきましょう。

教えるルール10カ条

最後に、本書で紹介されている「教えるルール10カ条」をご紹介します。
頭に入れておくだけで、
教えることへの意識が大きく変わります。

  • ① 熱意よりも何をどうすればいいのか具体的な指示を
  • ② 「教えた」かどうかは「教えられる側が学んだかどうか」で考える
  • ③ 結果が思わしくないのは、すべて教える側の責任
  • ④ 上手に教えたいならコミュニケーション力を上げる
  • ⑤ 教えるときは相手をよく観察して相手の状況をつかむ
  • ⑥ 相手にとってちょうどいい知識を与える
  • ⑦ 相手に教えたことを練習させて結果をフィードバックする
  • ⑧ 相手にできるようになってほしい具体的なゴールを決める
  • ⑨ 相手の「心」は変えられないが、「行動」は変えられる
  • ⑩ ゴールは必ず「行動」として設定する

手帳に書き写したり、デスクに貼ったりして、
常に目に留まる場所に置いておくのがおすすめです。

出典:向後千春『世界一わかりやすい教える技術』

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